社会構想研究科

背景

社会のあるべき姿を構想し、実現するために

「不確実性の高い社会」と呼ばれる現代社会においては、高度な専門的能力を修得する以前に、そうした能力が依って立つ社会にどうあってほしいか、あるいはそうした社会において組織や制度がどうあるべきかといった事柄について立ち止まって考えることが求められます。また、社会全体の持続可能性が危機的状況にあるなかで、民間企業やNPO・NGO、さらには一人ひとりの市民もまた公共的・公益的な活動の担い手として期待されています。社会的起業を通じて経済活動と社会貢献の好循環を実現し、持続可能な形で社会課題の解決に取り組むこと、ひいてはそうした人材を育成していくことも社会構想の観点からは必要不可欠です。

 

そうだとするといま求められるのは「経験や感覚に頼らず理論やデータに基づいて社会の実情を見定め、社会の理想像を措定し、それを実現する」ための一連の能力を備えた人材を養成する教育機関といえます。社会構想研究科の目的は、社会の諸側面を分析するための深淵な学識を身につけ、社会課題の解決を図るための卓越した能力を培うことで、長期的な視野から社会善を追求し、その実現のために社会や組織のグランドデザインを描くことのできる人材や、新たな社会的価値を創出できる人材を養成することにあります。

養成する人材像

  • 社会や組織のグランドデザインを描くために必要な知識を体系的に修得するとともに、それを実現するための具体的な方法論を実践的に身につけた政治家、経営者等

  • 理論的視座から社会動向と社会課題の本質を見定めたうえで、経済活動を通じてそうした課題の解決を図るための思想と技術を修得した社会起業家、ソーシャルイノベーター等

社会構想研究科3つの領域

  • 地域社会やデジタル社会,福祉社会といった概念で表現される現代社会の諸側面を社会学をはじめとする社会科学の視点から適切に理解することは,効果的で実現可能なグランドデザインを構想するための基盤となります。また,それらを支える公共哲学の多様な視座や,パブリック・アフェアーズをはじめとした「社会実装」のための具体的な方法論を学ぶことで,従来の考え方にとらわれないアイデアを練り上げ,実現するための専門性を高めることができます。

  • 紛争や環境問題などのグローバルリスクが山積する状況において社会や組織のあり方を考えるためには,国際社会学に関連する理論的視座を修得するとともに国際問題を分析し解決するための思考枠組みを身につけることが必要不可欠です。ほかにも異文化間コミュニケーションの理論と実践の蓄積や,国際安全保障に関する専門性を修得していくなかで,国境や文化を越えた社会のダイナミズムを捉えるための能力を養うことができます。

  • 社会的起業をはじめとする経済活動を通じて社会課題の解決に貢献するためには,社会課題それ自体への理解はもとより,経営学や産業社会学をはじめとする知見や,ステークホルダーとの「対話と協働」を実現するための方策を修得することも必要不可欠です。さらに,実在の社会的企業に関するケーススタディや、社会起業家の分析を継続的に行うことは,自らの構想する社会的起業の実現可能性と価値を高めていくことに繫がります。