3つのポリシー

背景

大学の目的(学則 第1条)

広い視野に立って精深な学識を授け、研究教授を通して高度情報社会の課題解決力と価値想像力を有する高度な専門的職業人の育成を目的とする。

研究科の目的

実務教育研究科は、建学の精神に則り、大学などの高等教育機関をはじめ専門学校等の専門職業人養成機関の教員の養成や、社会におけるあらゆる領域の新たな教育を切り開く人材の育成と資質向上をめざして、専門職業を担うための深遠な学識及び卓越した能力を培うことを目的とする。

養成する人材像

知識社会では、みずからの実務の経験と理論の融合をはかって他者に伝達可能な新たな知識を確立し、どのように社会に「実装」して活かしていくのかを考え、さらにその伝達・継承をする能力が、社会のあらゆる領域において求められている。こうした社会においては、新たな知識の創造・伝達・活用を担う高度専門職業人たる「実践知のプロフェッショナル」の養成が急務である。とりわけ、実務教育研究科が着眼するのは、自らの実務の領域における実践知を再構成することで実践の理論を創造し、社会に即した伝達のありかたを考えることのできる知のプロフェッショナル、すなわち、実務領域にかんする教育・人材育成を行う高度専門職業人の養成である。みずからが実務領域のプロフェッショナルとなるのみならず、その有する実務経験を理論にもとづき新たな知の体系へと昇華させ、効果的な伝達方法をもって後続のプロフェッショナルを養成することのできる能力をあわせもつ人材を、高度専門職業人として輩出していくことが、今後の知識社会を支える基盤となる。

実務領域にかんする教育・人材育成を行う高度専門職業人たる実践知のプロフェッショナルとして具体的に想定されるのは、つぎのような人材である。

  • 自らの実務経験を体系化して既存の学知と社会における布置を定め、その普及のために効果的な学習プログラムを編成して適切に指導する能力をもった、専門職大学・専門学校の分野で専門職業人の養成に携わる、実務家教員等

  • 組織に遍在する固有の知を収集・体系化し、その継承を可能にするよう、組織と人に対して計画的な学習プログラムや研修制度といった新たな組織内学習システムを考案することで、企業活動の活性化と持続性を高めることのできる、組織内人材育成のプロフェッショナル

  • 社会の動向とニーズを踏まえて今後必要とされる新たな知識を見定め、散在する実践知を体系化し、効果的な技能習得プログラムとそれに基づく事業を構想することができる民間教育産業・教育事業の担い手

学位授与の方針(ディプロマポリシー)

実務領域にかんする教育・人材育成を行う高度専門職業人たる実践知のプロフェッショナルとなるにあたって、学生に修得することが求められるのは、「実践の理論」の創造や利活用に向けて、1)みずから携わる領域における固有の知識の社会的布置を見定める能力や、2)経験や暗黙知を言語化・体系化して実践の場での活用と深く結びついた固有の理論をつくりだす能力、3)創造した知識を効果的に伝達するための教育プログラムを構想する能力、そして、4)自ら構想した教育プログラムに基づく教育・研修を効果的に実践し、社会に実装する能力である。そのため、実務教育研究科では、つぎのとおりディプロマ・ポリシー(学位授与の方針)を定める。

実務教育研究科は、本研究科の理念・目的及び教育目標に基づき、所定の単位を修得し、専門職学位論文の審査に合格し、学修成果が次の到達目標に達した学生を、実務教育分野における卓越した能力をもつ高度専門職業人と認め、実務教育学修士(専門職)の学位を授与する。

  • 1 - 自ら携わる実務や組織、産業の領域における固有の知識の社会的布置を、経験的な調査に基づき、社会の動向との関連で理解し、反省的(リフレクシブ)に問い直すことができる(問題を発見し、実証的調査を行う能力)。

  • 2 - 自ら携わる実務や組織、産業の領域における経験や暗黙知を、社会学や教育学の理論に基づいて、論理的に言語化・体系化することで人類共通の知識として参照・比較可能な形式知に変換し、実践の場での活用と深く結びついた固有の理論を創造できる(理論的に思考する能力)。

  • 3 - 自ら携わる実務や組織、産業の領域における実践と深く結びついた固有の理論を効果的に伝達・普及するための実行可能なプログラムを構想できる(社会を構想し提言する能力)。

  • 4 - 自ら携わる実務や組織、産業の領域における経験に基づいて、自ら構想した教育プログラムにかんする教育・研修を実践し、社会に実装することができる。(教育を実践し社会に実装する能力) 。

教育課程の編成方針(カリキュラムポリシー)

社会構想大学院大学実務教育研究科は、ディプロマ・ポリシーに示した目標を学生が達成できるよう、以下の方針に基づき教育課程を編成・実施する。

学生自らが実務経験で身につけた専門的知識と実践的な視野の上に、個別の学生の関心に沿ってより専門的な学修を深める機会を提供するため、理論的科目と実践的科目を有機的に組み合わせ、段階的に履修できるような教育課程を編成・実施する。

  • 1 - 自らが携わる実務や組織、産業の領域における固有の知識の社会的布置を社会動向との関連で理解し、反省的(リフレクシブ)に問い直す理論と方法を学修するための科目を配置する。

  • 2 - 自ら携わる実務や組織、産業の領域における実務経験を基礎とした実践知を言語化・体系化し、参照・比較可能な形式知へと変換するための理論および方法を学修するための科目を配置する。

  • 3 - 自ら携わる実務や組織、産業の領域における経験や暗黙知を言語化・体系化した実践知を、広く社会と共有するための理論および方法を学修するための科目を配置する。

  • 4 - 自らの実践と深く結びついた理論を効果的・効率的に伝達・普及するための教育の実践およびプログラムの構想のための理論および方法を学修するための科目を配置する。

  • 教育課程編成にあたっては、知識・社会・教育をめぐる基本的な概念とその背景を学ぶ基礎科目、専門科目を履修する前段階にあたる学術領域や実践にかんする基本的な概念や動向を学ぶ専門基礎科目、実践知の体系化およびその普及・活用において核となる専門的な学術領域や実践についての理論動向を学ぶ専門科目、理論を効果的に伝達・普及し、社会実装を行うための理論や具体的な方法について学ぶ教育実践科目、個別の学生の実務の領域における課題に応じた理論の創造や伝達・普及の方法論を検討し、社会に実装可能な構想を作りあげるための実践的な科目である展開科目という5つの科目区分を段階別に設け、それぞれの科目を配置する。これによって、先に記した人材像に到達するための総合的かつ専門的な学修を可能にする。

  • また、専門科目においては、それぞれの科目を①実践の場での活用と深く結びついた固有の知識についての理論の創造・社会的位置づけ・理論との融合を中心的に学修する知識社会領域、②組織における知の収集・体系化・継承を中心的に学修する組織学習領域、③社会ニーズを踏まえた次世代の学習理論や学習プログラムの開発や、それを踏まえた教育産業・教育事業の運営・マネジメントを中心的に学修する教育構想領域という3つの領域に位置づけることで、知識の社会的布置をめぐる分析・評価や、実践と深く結びついた理論の創造、伝達・普及の実践的な方法論を構想する能力を、各自の実務経験や職業専門性に応じたかたちで修得することを可能にする。

  • 教育実践科目においては、自らの実践と深く結びついた理論を伝達・普及するための具体的な方法としての教育実践について検討する。具体的には、授業・研修プログラムに関する理論を学び、立案、実践及びその振り返りを通じて、効率的・効果的な教育・人材育成を実現するために必要な知識・技能・態度について各自の状況に応じたかたちで修得することを可能にする。

  • さらに、個別の学生の課題に応じた理論の創造やそのための方法論について検討し、社会に実装可能な構想を作りあげるための展開科目は、次の3種類に分けて考えられる。第1に、1年次に研究活動に必要となる基礎的な素養を身につける。第2に、そのうえで2年次は、実務領域にかんする教育・人材育成を社会に実装するための調査・研究・構想能力を身につけ、専門職学位論文の完成を目指す。

  • なお、専門職学位論文の指導には、各演習の担当教員を中心に本研究科のすべての専任教員があたり、個別の学生の関心に応じた適切な教員による個別の指導・助言をおこなうほか、複数回の報告会を設けることで、学生が多面的な観点から指導・助言を受ける機会を設ける。

  • 授業形態は、高度な専門知識や知識の体系化手法を実践的・体系的に学ぶ機会を提供する講義と、実践と深く結びついた理論の創造とその伝達・普及の効果的な方法を実践的に身につける演習に大別される。いずれの科目においても、専門職大学院の趣旨に鑑み、双方向の少人数教育を重視し、ディスカッションに加えて、ケース・スタディ、ワークショップ等の形式での授業を積極的に取り入れる。これによって、体系的かつ実践的な理解に基づき、自ら携わる実務や組織、産業の領域に関する教育構想を行うための的確な判断と柔軟な思考の修得機会を提供する。

  • 各科目の学修成果は、筆記試験、レポート試験、演習・実習成果等に加え、各科目の性格に応じて、授業内課題、質疑応答や討論への貢献状況、演習にあっては期間中の調査・準備の状況に基づいて評価する。成績評価は100点満点で行い、80点以上を優、70点から79点までを良、60点から69点までを可、59点以下を不可とし、優・良・可の評価に対して単位を認定する。成績評価の具体的な方法は、シラバスにおいて授業科目ごとに明示する。

学生受入れの方針(アドミッションポリシー)

実務教育研究科は、実務領域にかんする教育・人材育成の領域で、自らが持つ実践知やこれからの社会が必要とする知を俯瞰し、既存の学知や周辺知との布置を定め体系化することで、既存の知識体系を超えた先にある新たな知を創り出すとともに、それを適切な方法で普及・活用できるプログラムを自ら開発する能力を備えた人材を育成する。

本研究科は、こうした教育理念に共鳴し、意欲を持って主体的に勉学に取り組み、実践知を教育・人材育成分野に還元することのできる高度専門職業人として社会に貢献したいと考える、優れた資質を有する幅広い人材を受け入れる。以上のことから、受け入れることが望ましい学生像は、概ね5年以上の実務経験を持つ、次のような者である。

  • 1 - 現代社会の動向に関連する幅広い教養を有し、実務の領域における課題について、社会学や教育学等の社会科学的な観点から考察する能力を有していること。

  • 2 - 実務の領域にかんする教育・人材育成の経験を有し、又はそれに強い関心を有し、その実務の領域において知識が果たす現代的役割について、理論と実践の両面から主体的に考える強い意欲を有していること。

  • 3 - 実務領域にかんする教育・人材育成を行う高度専門職業人の育成を目的とした専門職学位課程の教育プログラムに対して、旺盛な知的意欲と社会的役割意識をもって参加し、相互に切磋琢磨できる資質があること。