[研究テーマ] 離職防止に資するコミュニケーションについて考察

研究テーマ決定のきっかけ
筆者は製薬会社に勤務しており、広報部門に所属し社内外へのコミュニケーションを担当している。そのなかで、将来が期待され、所属組織に対する貢献意欲を高く持っていた20代~30代の若手・中堅社員の離職に遭遇する頻度が高くなり、離職に対する課題意識を持った。
人材の流動性は否定されるべきものではないが、昨今変化しつつある個人と組織の関係性の変化を踏まえ、コミュニケーションというアプローチからこの課題解決に何らか貢献する糸口を見出せないかと本研究テーマを選択した。
研究で見えてきたこと
本研究は、昨今の個人と組織の関係性の変化と製薬業界の特性を踏まえ、個人の離職防止に望ましいコミュニケーションについての考察、提案を目的とした。
個人-組織関係(EOR)の先行研究では個人と組織は主に交換関係で表され、国内では両者が互いに何を期待(交換)するかのコミュニケーションが不十分であるとの指摘がなされている。
製薬業界勤務者15名に実施したヒアリングからは、個人が組織に期待する対価は給与のみならず「社会」において通用する人材となるための成長機会であること、また製薬業界の特性として自身の強みを活かした「社会」への貢献機会であることがうかがわれた。これにより、個人と組織の新しい関係性を語るには「社会」を加えた3者間の関係性を踏まえる必要性があることが考えられた。
筆者の提言
離職防止に資するコミュニケーションとしては、社会において通用する人材となるための成長機会(インプット)と社会(顧客)への価値提供(アウトプット)の実感につながるコミュニケーションを、個人に対し定期的且つ継続的に実施すること、また個人と組織の関係性を「交換」だけでなく、社会への「価値共創」へ発展させることを提案した。まだ続くコロナ禍の影響は多少あるかもしれないが、多様且つ魅力的な恩師や学友に出会い、新しい価値観や視点に触れるワクワクする時間を、そして時に悩みながら研究成果報告書と向き合う時間を、目一杯楽しんでほしい。
入学者へのメッセージ
社会人学生の強みは、今日の学びを明日の実務に活かすことができることと、自身に日々刻み付けていけることだと実感している。もし迷っているのであれば、一度飛び込んでみるのも良いと思う。皆さんの2年間が、多くの学びと出会い、そして将来の可能性を広げるものになることを心から祈る。

大西 順子

大西 順子

(おおにし じゅんこ) 
製薬会社に入社後、MR(医薬情報担当者)、事業開発、広報などを担当。
2022年修了