持続可能なまちづくりと広報・コミュニケーション

私は2010年に静岡市役所に入庁し、これまで水道事業や駅周辺の整備事業、企業誘致業務などの部署を経験しました。その中でも、首都圏のビジネスパーソンに向け市の良さを伝え、関心を持っていただくという企業誘致業務において、コミュニケーションの重要性を感じていました。人口減少に伴い、自治体間競争は激化しています。また、情報技術の進歩は著しく、社会構造が多様化する中では、地方自治体に求められるコミュニケーションにも変化が起きています。従来のように一方的な情報発信ではなく、コミュニケーション戦略によって様々なステークホルダーと関係性を構築していくことが必要になってきています。
このように、変化の激しい現代社会の中で、公平・公正の立場だけに捉われず、静岡市らしい魅力的なまちづくりをするためには、物事について表面的ではなく、本質的な理解をする必要があると考え、この社会情報大学院大学で広報・コミュニケーションを学ぶことを決めました。
実践と理論の往還で得た気づき

大学院生活は楽しさ半分、苦しさ半分というのが正直なところです。授業の中では新たな知見や考えとの出会いがあります。また、同期の院生は幅広い分野から集まっているため授業内でのディスカッションでは、様々な視座から物事を考えることが出来ます。
一方、社会人大学院は教えてもらうのではなく、学びに来るところです。PRをアピールと同義語として使用していたような広報・コミュニケーションの知識が乏しい自分にとっては、初歩的なところで理解が遅れることもありました。さらに、授業外では課題や研究論文を進めなければならず仕事と家庭、学業のバランスを取ることは簡単ではありません。しかしながら、社会人大学院の良いところは、実践と理論の往還が出来るところにあると感じています。私自身、本学で学んだことを、少しずつ業務に活かしています。例えば、マーケティングのフレームワークをシティプロモーション業務の戦略策定や企画実施に活用しています。
また、自治体の中では、広報というと情報発信ばかりを意識してしまっていることにも気付かされました。どのツールを使ってどのように発信するのかということに終始するのではなく、誰に対して何を発信するのか。相手に合わせ適切な情報を創造する「情報創造力」や目的遂行に向けた広報戦略を構築する「戦略構築力」など、このよ
うな力も広報の中には内包されているということを学びました。

持続可能なまちづくりに向けて

人口減少が進み、税収が減少する中では、地方自治体も持続可能なまちづくりを進めなければなりません。これまでのように行政の仕事だけで完結することはなく、企業、行政、市民が共創し、補完し合いながら成熟した社会を形成していくことが求められます。
その上で、地方自治体のコミュニケーションはとても重要になってきていると感じています。この大学院で、様々な分野の院生とディスカッションして得た新たな気付きや知見。また、様々な分野で活躍する教職員の方々からの学びをこれからの自治体運営に活かしていきたいです。

松木 喜伯

松木 喜伯

(まつき よしのり)
静岡市役所 広報課